宣誓書または宣言書
宣誓書を通じて、記名された発明者は、請求されている主題の最初の発明者であると信じていることを誓います。
仮出願には宣誓書は必要ありません。また、本出願については、宣誓書の提出なしでも出願日が割り当てられます。特許庁は、宣言書を宣誓書の代替として認めています。したがって、本出願の記名された発明者からは宣誓書または宣言書のいずれかが必要ですが、両方は必要ありません。新規事項が出願に追加された場合、新規なまたは補足的な宣誓書または宣言書が必要となります。これは、例えば、必要な書類(図面、クレーム、明細書等)を含めるのを忘れた状態で出願人が宣誓書に署名した場合や、親出願に新規事項を追加した一部継続部分出願を提出する場合などです。宣誓書または宣言書の文言は、署名された後にいかなる方法でも補正、修正、または変更することはできません。文言が正しくない場合や、必要な確認がすべて行われていない場合は、新しい宣誓書または宣言書が必要となりす。
AIAによる発明者の宣誓書または宣言書の変更
Leahy-Smith America Invents Act(「AIA」)に従い、特許庁は、発明者が発明を譲渡したり、譲渡する義務がある人(「譲渡人」)に対して、出願人として特許出願および審査手続を行うことができるように、実務上の規則を改訂しました。新しい規則では、発明者に代わって出願人として特許出願を行い、審査を受けることができる十分な権益を持つ人も認められています。以前は、発明者から譲渡を受けた者が特許出願および審査手続を行うことができたものの、発明者が出願人と見なされていました。
また、特許庁は、出願が許可の条件を満たすまで発明者の宣誓書または宣言書の提出を延期できるように、実務上の規則を改訂しました。新しい規則によれば、出願人は、出願の提出時に発明者の宣誓書または宣言書を提出するか、特許庁が許可通知を発行するまで発明者の宣誓書または宣言書の提出を延期できます。ただし、出願人が発明者を特定する署名付の出願データシート(ADS)を提出していることが条件です。
さらに、特許庁は、発明者が死亡している場合、法的無能力となっている場合、努力をしても見つからないか連絡が取れない場合、または発明を譲渡する義務があるが宣誓書または宣言書への署名を拒否した場合に、発明者の宣誓書または宣言書の代わりに代替声明書を提出できるように、実務上の規則を改訂しました。
最後に、特許庁は、「欺瞞性の意図がない」要件を定めた規定を削除するために、実務上の規則を改訂しました。また、特許のクレームの範囲を拡大しようとする再発行出願において、再発行出願が拡大を求めるクレームを特定する発明者の宣誓書または宣言書を要求するように、再発行実務に関する規則を改訂しました。
AIAの新しい発明者の宣誓書および宣言書の規定は、2012年9月16日以降に実際に提出された出願に適用されることに注意してください。通常、分割出願または継続出願をする場合には、親出願の発明者の宣誓書および宣言書のコピーを使用しますが、親出願の出願日が2012年9月16日前の場合には、親出願の発明者の宣誓書および宣言書のコピーは使用できず、AIAの規定に適合した新たな発明者の宣誓書および宣言書が必要となります。
開示
特許を得るためには、発明者はその発明を完全に開示する必要があります。この開示は、特許保護の quid pro quo(ラテン語で「何かに対して何かを与える」の意味)と呼ばれています。第112条第1段落には、特許庁が特許を付与する前に満たす必要がある明細書のいくつかの異なる要件が含まれています。これらの要件には、(1)記載要件、(2)実施可能要件、および(3)ベストモード要件が含まれます。これらの要件については後述しますが、特許庁に提出された開示は特許発行までにいくつかのハードルをクリアしなければならないことを理解する必要があります。
開示は、一般的に(A)明細書と(B)図面から構成されます。明細書は、通常次のセクションを含みます。(1)発明の名称、(2)関連する出願への相互参照、(3)発明の背景、(4)発明の概要、(5)図面の簡単な説明、(6)発明の詳細な説明、(7)1つまたは複数のクレーム、および(8)要約。
従属クレーム
一般的に、クレームには(1)独立クレーム、(2)依存クレーム、の2つの形式があります。。独立クレームは他のクレームを参照しません。たとえば、「テントポールを製造するシステムにおいて(A system for
manufacturing a tent pole, comprising)」で始まるクレームは独立クレームです。一方、「クレーム1のシステムであって(The system of claim 1 further comprising)」で始まるクレームは従属クレームです。従属クレームは引用するクレームをさらに制限する必要があります。
クレーム1:A、B、およびCを含むテントポールを製造するシステム。
クレーム2:クレーム1のシステムであって、DおよびEをさらに含むシステム。
前述の例では、クレーム1は独立クレームであり、クレーム2は従属クレームです。クレーム1はA、B、およびCの要素を含みます。クレーム2は、クレーム1に従属しており、そのためクレーム1の要素全て含んでいるので、A、B、C、D、Eを含んでいます。
実務ではあまり使われませんが、多数従属クレームは、複数の先行する独立クレームまたは従属クレームを択一的に引用する従属クレームです。たとえば、次のものが多数従属クレームの例です。
クレーム3:クレーム1または2に従うシステムであって、FおよびGをさらに含むシステム。
多数従属クレームは、択一的に複数のクレームを引用する必要があります。クレームが択一的に他のクレームを引用していない場合、クレームは不適切です。たとえば、次のクレームは不適切です。
クレーム4:クレーム1および2に従うテントポールを製造するシステムであって、FおよびGをさらに含むシステム。
クレーム4は他のクレームを択一的に引用していないため不適切であり、審査官から形式拒絶(objection)が出されます。同様に、以下のクレーム5も不適切です。
クレーム5:クレーム1〜2に従うテントポールを製造するシステムであって、FおよびGをさらに含むシステム。
クレーム5も択一的にクレーム1および2を引用していないため、不適切です。ただし、クレームが次のように記述されている場合は適切です。
クレーム6:クレーム1〜2のいずれかに従うテントポールを製造するシステムであって、FおよびGをさらに含むシステム。
クレーム3と同様に、クレーム6は択一的に複数のクレームを引用しているため、適切な多数従属クレームです。多数従属クレームの適否を評価する際の基準は、クレームが択一的に他のクレームを引用している(つまり各選択肢が1つのクレームのみを引用する)かどうかです。
新規事項
明細書に対する補正はすべて、当初開示(すなわち、出願時の明細書、クレームおよび図面に記載された事項)に基づいている必要があります。出願人が当初明細書にはサポートされていないクレームを追加しようとしたり、直接、明細書の他の部分に補正を行って以前に開示されていない事項を追加しようとすると、審査官は「新規事項」の導入に基づく実体拒絶(rejection)または形式拒絶(objection)を出します。本質的に、「新規事項」の追加に対する制限は、出願人が、当初に開示された発明を変更することを防止します。特許庁は、特定の出願に対して認定された出願日が、出願人が当初に提出した書類のみを含む日に相当ことを確認します。
明細書に新規事項が導入された場合、132条に基づき、補正には形式拒絶が出され、新規事項の削除が要求されます。新規事項がクレームに導入された場合、またはクレームの範囲に影響を与える場合、112条に基づき、新規事項が出願時の開示範囲にないため、補正の影響を受けるクレームが拒絶されます。